
パパ・ママ「一口は飲むけど、ごくごく続けて飲めない」
「半分以上、あごから下にじゃじゃ漏れ…」
支援センターや保育園で、コップでごくごく飲んでいる同じくらいの子を見かけると、
「うちの子、大丈夫かな」と少し考えてしまうこと、ありますよね。
でも、実は。コップでごくごく飲めるようになるかどうかは、
月齢では決まりません。
私が現場で見ているのは「口の動き」がどこまで育っているか、なんです。
そしてその口の動きは、コップを持たせた日ではなく、
離乳食のスプーンの時点から準備が始まっています。
ある日いきなりごくごく飲めるようになった子も、突然できたわけではありません。
見えないところで、準備がもう終わっていただけなんです。



だから、いま苦手な子も大丈夫です。
今どの段階にいるかがわかれば、準備の仕方が見えてきます。
- ごくごく飲めるようになるまでの「口の動き4ステップ」
- うちの子がいま、どのステップにいるかの見分け方
- ステップ別・今日からできる手助け3つ
ごくごく飲めるまでには「口の動き」の4ステップがある
コップ飲みは、ひとつの技ではありません。
4つの動きが順番に積み上がって、いちばん最後に完成します。
まずは全体を見てみましょう。
ここがわかると、「うちの子が今どこにいるか」が驚くほどはっきりします。
| 育つ口の動き | だいたいの時期 | このとき使う道具 |
|---|---|---|
| ①唇を閉じて取りこむ | 5〜6か月ごろ | スプーン |
| ②すすってみる | 7〜8か月ごろ | スプーン |
| ③2〜3回続けてごくごく飲む | 9〜11か月ごろ | スプーン→小さな器→コップ |
| ④自分で持って飲む | 12〜18か月ごろ | 取っ手つきコップ |
ここでひとつ、先に言っておきたいことがあります。
①から③までは、ぜんぶ上唇の話です。
④だけが、手と姿勢の話。
つまり、コップ飲みで悩む時期のほとんどは、上唇が育つのを待っている時間なんです。



4つ目だけ切り取って練習してる家庭、すごく多いです
①5〜6か月ごろ:唇を閉じて「取りこむ」力が育つ


すべての出発点は、離乳食を始めたころの上唇です。
自治体の歯科保健資料には、離乳初期のスプーンの入れ方がこう書かれています。
スプーンを水平にして下唇にのせ、上唇が閉じるのを待つ。
上あごにこすりつけて流し込まない。
つまり、赤ちゃん自身が上唇を下ろして「取りこむ」のを待つ、ということです。
この待つ時間が、上唇の力を育てます。



この数秒を焦らずに待てるかどうかが、あとから効いてきます
いちばんやりがちなのが「上あごにこすりあげる」
スプーンを口に入れて、上あごにこすりつけるようにして中身を落とす。
これ、本当によく見ます。
責めるつもりは全然なくて、急いでいるときの気持ちは私もよくわかります。
次の予定があって、まだ半分も減っていなくて。つい、手が上に動いてしまう。
でも、こすりあげると、赤ちゃんは上唇を使わなくて済んでしまいます。
何もしなくても口の中に入ってくるので、上唇を下ろす理由がないんですね。



食べさせてあげたい気持ちが、手を上に動かすんですよね・・・
そしてこれ、離乳食が終わっても続きます。
幼児食になって、食べるのが遅い子に「早く食べようね」と口に運ぶとき、
同じことが起きています。
やることは、スプーンを水平のまま抜くだけ。
上唇が下りてくるのを待って、まっすぐ引く。
それだけで、上唇の出番が毎食何回か増えていきます。
水分も同じです。
閉じた上下の唇の間にスプーンを横向きに入れて、上唇が水分に触れたら少しだけ傾ける。
上から流し込むのではなく、赤ちゃんが自分から取りこむ形にします。
コップ飲みでこぼれる子の多くは、この上唇の力が育ちきっていないことが多いです。
上唇でコップのふちをせき止められないから、口の両端から流れ出てしまうんですよね。
②7〜8か月ごろ:スプーンから「すすってみる」
唇を閉じられるようになったら、次は「すする」動きです。
やり方は①とほとんど同じ。
閉じた唇の間にスプーンを横にして入れ、上唇が水分に触れるまで待ちます。
すると、赤ちゃんのほうから吸い寄せるような動きが出てきます。
これが「すすり」の始まりです。
大人が先に傾けてしまうと、水は勝手に口の中へ入ってきます。
それだと赤ちゃんは何もしなくていいので、すする動きが出てこないんです。
母乳や哺乳瓶で飲むときの動き(吸啜)は、生まれつき備わっている反射的な動き。
でも「すすり」は、自分の意思で唇と舌を動かす、
これが「じぶんで食べる」につながるまったく新しい運動です。
③9〜11か月ごろ:2〜3回続けて「ごくごく」できるようになる


いよいよ「ごくごく」の正体です。
先に結論から言いますね。
ごくごくを作るのは、上唇です。
上唇が使えるようになると、入ってくる水を止められるようになります。
コップのふちに上唇がふたをして、いったんせき止める。
止められるから、飲み込むタイミングを自分で決められる。
決められるから、続けて飲める。
これが「ごくごく」の正体でした。
逆に上唇が使えていないと、水は止まらずに流れこんできます。
飲み込むひまがないまま次が入ってくるので、口にたまって、あふれる。
こぼれているのは、飲むのが下手だからじゃないんです。
止める力が、まだ育っていないだけ。
じゃあ器は何のためにあるのかというと、上唇を使う練習の場なんです。
飲み口の狭いものから順に、少しずつ広げていきます。
| 段階 | 使うもの | 飲み口の広さ |
|---|---|---|
| 1 | 大人用のスプーンを真横にして | いちばん狭い |
| 2 | おちょこ、小鉢 | 子どもの口の幅くらい |
| 3 | 小さめのコップに少量 | いちばん広い |
スプーンの次にいきなりコップを出すと、飲み口が一気に広がります。
どこで止めればいいかわからなくなる子もいるので、あいだに一段はさむと慣らしやすいです。
おちょこや小鉢くらいの大きさなら、大人が扱いやすいのもいいところ。
傾ける角度を細かく調整できるので、子どもの上唇を見ながら、すすったら離す、の加減がとりやすくなります。
そして、どの段階でも大人がやることは同じ。
- 唇で縁をはさませる
- 自分からすするのを待つ
- 一度すすったら、いったん口から離す



飲ませるんじゃなくて、すするのを待つ。
うまくいかない日は、大人が先に飲んで見せるのも手です。まねから入る子、けっこういます。
すすらないと出てこない「ミラクルカップ」
上唇の力はありそうなのに、コップになるとうまくいかない。
そういう子も、けっこういます。
力がないんじゃなくて、いつ止めればいいかが、まだつかめていないんですね。
ふつうのコップは、傾けたぶんだけ水が来ます。
どれくらい来るか、どれくらいの速さで来るかが、子どもには読めない。
だから止めるタイミングが合いません。
そこで使いやすいのが、マンチキンのミラクルカップです。
このコップ、傾けただけでは中身が出てきません。
ふちを上下の唇ではさんで、すすったときにはじめて出てくる仕組みになっています。
つまり、自分ですすらないと飲めない。
だから、すする練習がそのまま毎日の水分補給になるんです。
水が一気に流れこんでこないので、「今だ」と唇を閉じるタイミングもつかみやすくなります。
倒してもこぼれないので、大人が途中で止めなくて済みます。
正直、そこがいちばん大きいかもしれません(笑)



水浸しにならないのがうれしいですね。
④12〜18か月ごろ:自分でコップを持って飲む


最後が、道具を自分で扱う段階です。
③まで、コップは大人が持っていました。
ここからは、子どもが自分で持ちます。
選ぶなら、両手で持てる取っ手つきで、軽いもの。
例をひとつ挙げるなら、リッチェルのトライ コップ飲み練習カップです。
手前にカーブした取っ手がついていて、容量は130mL。
1歳の子が両手で持つのに、ちょうどいい大きさです。
いいなと思うのは、ふたのふちで直飲みの練習ができるところ。
一度にたくさん出てこないので、自分で持っても、こぼさずに飲めます。
「こぼす → 気まずい → コップがきらい」にならずに済むのが、いちばん大きいと思っています。
| こんなとき | 向いているのは | 理由 |
|---|---|---|
| すすりがまだ。 一気に流れこむとむせる | ミラクルカップ | すすらないと出てこないので、すする動きが引き出される |
| すすれる。 自分で持ちたがる | リッチェル | 取っ手つき。少しずつしか出ないので、自分で持ってもこぼれない |
どちらも、購入しないといけないわけではありません。
食べさせ方、飲ませ方に気をつけるだけでゴクゴクの練習はできます。
ただ、難しくてわかんない。こぼれるのが不安だなっと思ったときに、頼れる商品だなと想います。
そして忘れられがちなのが、手と体幹です。
コップを傾ける角度を自分で決めて、飲み込むタイミングと合わせる。
これは口だけの仕事ではありません。姿勢が安定していないと、傾ける手も安定しません。



足がぶらぶらしてると、口も落ち着きません
だからゴクゴクでつまづいて見える子の中には、口ではなく姿勢が原因という子もいます。
椅子に座って足の裏がつく状態を作るだけで、急に上手になることもよくあります。
なお、1歳6か月児健診でコップ飲みの様子を見られることがありますが、
これは「できないと問題」という意味ではなく、口と手の育ちを見るひとつの目安です。
その場でできなくても、経過を見ましょうと言われることがほとんどです。



健診で焦らされる必要、ないですよ
うちの子は今どこ?4ステップの見分け方
ここからが本題です。同じ「コップが苦手」でも、止まっている場所によって、やることはまるで違います。
お子さんの飲み方を思い浮かべながら読んでみてください。
| こんな様子なら | いま育てている動き | やること |
|---|---|---|
| 口の両端からこぼれる | ①唇を閉じる | スプーンで待つ |
| 一口は飲むが続かない | ③連続ごくごく | スプーンの量を増やす |
| ストローなら飲む・コップは嫌がる | ②すすり | スプーンに戻る |
| 飲めるけどコップを持てない | ④手と姿勢 | 椅子と足台を整える |
ストローだと飲めるのにコップを嫌がる子は、賢い効率重視。
ストローマグでは上手に飲むのに、コップになると嫌がる。
これは1歳でとてもよくある姿です。
理由はシンプルで、ストローは「吸う」動き、つまり哺乳の延長でできてしまうから。
一方コップは、唇を前に出して舌を後ろに引く、別の運動です。
水分をとる道がストローで完成していると、わざわざ難しいほうを選ぶ理由がないんですね。



だって、飲めるんだもん。目的達成!
賢い!
ちなみに、くわえ方を見ると今の育ちがわかります。
ストローつきマグを深くくわえている子は、まだ上唇の出番が少ない状態。
上唇が閉じられるようになってくると、ふつうのストローを浅くくわえて飲めるようになります。
自治体の資料の中には、
ストローマグやスパウトマグの常用は3歳ごろまでは控えたい、と書かれているものもあります。
とはいえ、お出かけや車の中では本当に助かる道具です。
やめるかどうかではなく、
家のごはんのときだけはスプーンやコップにする、と場面で分けるくらいがちょうどいいと思っています。
ステップ別・今日からできる手助け3つ
ここまでで、お子さんの位置がだいたい見えてきたでしょうか。
あとは、そこに合わせた一手を足すだけです。どれも今日の夕ごはんから試せます。
ステップ①②の子:スプーン1杯の水から始める


用意するのは、ティースプーン1杯の水か麦茶だけ。
閉じた上下の唇の間に、スプーンを横向きに入れます。
縦ではなく横。
こうすると、水分が上唇に触れる面積が広くなって、
赤ちゃんが「水が来た」と気づきやすくなります。
そして、上唇が水に触れたら、ほんの少しだけ傾ける。
大事なのはここから。赤ちゃんが自分から唇を動かすまで待ちます。



流し込まない。これだけ意識してみてください
最初は反応がないかもしれません。それでも数日続けていると、唇がすっと動く瞬間が来ます。
そのとき使っているのが、コップ飲みで必要になる「すすり」の動きです。
食事の最後に1杯。それくらいの気軽さで十分です。
回数より、待てているかどうかのほうが大事なので、忙しい日は飛ばしても問題ありません。
ステップ③の子:スプーンの量を増やして「2回続けて」を作る
一口は飲めている子は、量を増やす段階に入ります。
歯科保健資料にも、こんな進め方が書かれています。
ティースプーンで一口飲みができるようになったら、
少しずつカレースプーンなど大きめのスプーンに替えて水の量を増やし、
2〜3回ゴクゴクと飲めるようにする。
一度に口に入る量が増えると、一回では飲みきれなくなります。
すると自然に、2回に分けて飲み込む動きが出てきます。
これが「ごくごく」です。



ごくん、ごくん。この2回目が出たら大成功です
うまくいかないときは、量を戻して大丈夫。
むせるようなら、迷わず前の量に下げてください。
現場で見ていても、この段階は行ったり来たりが普通です。
昨日できたのに今日はできない、というのも当たり前。
2回続けて飲み込めるようになってからコップを出すと、驚くほどすんなりいくことがあります。
急がば回れ、が本当によく効く場所です。
ステップ④の子:コップは「底が隠れるくらい」と椅子から
口の準備ができている子は、いよいよコップです。
選ぶなら、両手で持てる取っ手つきで、軽いもの。
中に入れる量は、底が隠れるくらいのごく少量から。
透明なコップだと、中身の量や傾き具合が子どもにも見えるので、飲み込むタイミングをつかみやすくなります。
そして、意外と効くのが姿勢です。


椅子に座って、足の裏がしっかりつく状態を作る。
足が浮いているなら、足台を置くだけでも変わります。
体幹が安定すると、手も口も落ち着きます。
立ったまま、歩きながらの練習は、バランスをとることに気を取られてうまくいきません。
そして、全部飲めなくても大丈夫。ふちに口をつけられたら、それだけでOK。
こぼしたことを責めるより、口をつけられたことを「できたね〜」「飲めたね〜」と言葉にする。
それだけで、子どもの「やってみよう!」の応援になります。



こぼす前提でエプロン。親の心が一番もちます(笑)
練習に付き合う余裕がない日は、ごはんの負担を減らすほうが先
ここまで読んで、「わかってはいるけど、そんな余裕がない」と思った方もいると思います。
待てるのは、作る側に少し余白があるときだけです。
献立に追われている日に「上唇が下りるまで待つ」のは、正直むずかしいと思います。
そういう時期は、練習をがんばるより、ごはんそのものの負担を減らすほうが先です。
幼児食の宅配は、栄養バランスを考える時間ごと預けられるので、その分の余白を「待つ時間」に回せます。
3社の中身と値段を比べた記事があるので、気になる方はこちらをどうぞ。
▶ 幼児食宅配3社を現役栄養士が丁寧に比較|食べない・作りたくない・時間がない日に



頼るのも立派な工夫です。私はそう思っています
「口の動き」の育ちをもっと知りたい方は、こちらも参考にしてください。
▶ 【2歳かじり取りできない】おやつの時間でできる「噛む力」の育て方
まとめ:ごくごくは、コップより前から始まっている
最後に、この記事でいちばん伝えたかったことをまとめます。
ごくごくを作るのは、器ではなく上唇
コップを買い替えても、練習の回数を増やしても、上唇の「止める力」が育っていなければ変わりません。
逆に言えば、上唇が育ってくれば、器は自然についてきます。
そして上唇が育つ場所は、コップの練習時間ではなく、毎日のごはんの一口ずつです。
『上あごにこすりあげない。今日はそれだけで十分です』
「遅れている」ではなく「今ここ」
コップでごくごく飲めないのは、練習不足でもわがままでもありません。
4つのステップのうち、まだ手前にいるというだけです。
月齢で比べると「遅れている」に見えます。
でも口の動きで見れば、「今ここまで来ている」に変わります。
同じ子の、同じ様子。見る物差しを変えるだけで、意味がまるごと変わるんです。
今日の一杯は、スプーン1杯からでいい
やることは、驚くほど地味です。
スプーンを横向きに入れて、上唇が動くのを待つ。
コップを買い足す必要も、練習時間を作る必要もありません。
毎日の食事の中に、もう練習の場所はあります。
「いきなりできた子」は、そこを積み上げていただけ。同じ道は、今日から歩き始められます。
焦らなくて、これでいい
今日できなくても、明日できなくても、大丈夫。
口の動きは、待っているあいだも育っています。
スプーン1杯の水から。それで十分です。
きっと、ごくごく飲む日はきます。


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