
「スプーンがまだ上手に使えません」「食具の使い方を教えるにはどうしたらいいですか」
そんな相談を受けることがあります。
自分が何気なくできてることを、教えるのって難しいですよね。
今回は、「発達の視点」から、スプーンやフォークが上手に使えるようになるまでの流れをお話ししていきます。
「うまく使えるようになる」までには、いくつもの小さなステップがあるのです。
この記事でわかること
- スプーン・フォークを使うために必要な発達のステップ
- 家庭でできる手先の遊び練習
- 食事の時間を「練習」ではなく「楽しい本番」にするコツ
なぜスプーンが使えないの?発達の視点でサクっと解説
スプーンを上手に使うために大きく3つ力が必要なんです。
ここでは「手首のひねり」「足の安定」「目と手の協調」の3つの力をそれぞれ解説します。
スプーン操作に必要な「手首のひねり」が未熟

1歳ごろ~1歳6か月程度の子どもは、
手首をくるっと回す動き(手のひらを上にしたり下にしたりする動き)がまだ上手にできません。
そのため、瓶のふたを開けたり、紙にクルっと丸を書く動きもぎこちないことがあります。
この頃は、肘をつかったり、腕を全体に動かしたりして、スプーンを口に持っていくように食事をします。
だから、すくうことも、ごはんを上手に口に運ぶのが難しかったりします。
座位が安定しない

スプーンを使う手先の動きは、実は足元から始まります。
足元がしっかり安定していると、背中やお腹の力で体を支えられるので、頭や手をスムーズに自由に動かせます。

姿勢を整えると、手の動きも安定してきます。
手と目の協調が追いついていないことも

スプーンを口に運ぶには、「見る」「ねらう」「動かす」を同時に行う力が必要です。
これを「手と目の協調運動」といいます。
まだ発達途上の時期では、視線がずれたり、口の位置を見失うことも。
「目で見て、狙いを定めて、手を動かす」って、実はとても高度な動きなんです。
たとえば手づかみ食べは、子どもが自分で狙いを定めて手を伸ばし、「食べる」「おいしい!」という経験を繰り返せる動きでもあります。

手づかみ食べは、スプーンを使う力の下地になります
子どものやる気を引き出す教え方

「慣れて」→「一緒に」→「自分で」の3ステップ
①大人がスプーンで食べさせる
まずは大人がスプーンを使って食べさせてあげましょう。スプーンに慣れることが第一歩です。
② 上握りで持たせて、大人が手を添える
次に、子どもにスプーンを上から握らせて、大人が後ろから手を添え、一緒に口まで運びます。
③ 一口分をのせて、自分で食べる
慣れてきたら、一口分をスプーンにのせてあげて、自分の力で口に運ぶ練習をします。
この3ステップは、「食べさせてもらう」から「自分で食べる」への自然な移行を支える順序になっています。
スプーンを使う動作は、実は「手のひら・手首・指先」の協調運動が必要で、1歳前後の子どもにはまだ難しいもの。
いきなり「自分でやってごらん」と言われても、うまくいかずにイライラしてしまうことがあります。
だからこそ、
①で「スプーンに慣れる」
②で「大人と一緒に動きを感じる」
③で「自分の力でやってみる」
というように、段階的に「できた!」の経験を積み重ねることが大切。
成功体験がひとつでも増えると、「もっとやってみたい!」という気持ちが自然と芽生えます。
この「やる気」こそが、食具の使い方を上達させる原動力になります。
やる気を引き出す「すくいやすい食器」

食器選びも重要!食べ物がすくいやすいものが〇

- 縁の高さがあるもの。
- すくう時に皿が動かない程度の重さのあるもの。
- 大きさはだいたい10~12㎝程度。
特に大事なのは、縁の高さと、重さだと思う経験があります。
自分で1歳半の子どもを介助していて、スプーンをやりたい!という意思はあるもの、炒めものがうまくすくうことが出来ず、いやになってスプーンを投げてしまう子がいました。

うまくできないー!!自分でやりたーーい!
そんな気持ちが伝わってきて、私はしばらく泣き止むのを待ちました。
そして少し落ち着いたころ、「一緒にやってみようか」と声をかけて、もう一度挑戦。
バラバラと食べ物がこぼれ落ちる中で、お皿の縁が高いことが支えになり、ついにひと口すくうことができたのです。
「できたね!」「やったね!!」
とすかさず褒めると、そのあとは泣かずに一生懸命スプーンを使っていました。
家でできる!スプーン動作を育てる遊び3選
遊びながら自然にスプーン動作の基礎を育てることができます。
心理士さんに教えてもらったのですが、
「一緒に楽しみながらも、遊びの中に少しだけ目的を意識すること」が大切だそうです。
たとえば、新聞びりびりでは「指先の力」、瓶の開け閉めでは「手首のねじり」の練習中なんだなとか。
楽しい時間の中で、実はスプーン操作に必要な力が自然と育っていきます。
新聞びりびりで指先の力を育てよう

新聞紙を破いたり、丸めたり、上に投げたり、散らかしたりする中で、
目と手の協応が、遊びながら自然と伸ばすことができます。
普段はダメ!って言われることが多いので、とても楽しそうな声が聞こえる遊びです。
ジャム瓶やペットボトルの開け閉めで手首を強化

ねじる動作は、手首の柔軟性と力の調整を同時に育てます。
最初はフタを少しゆるめて、大人が手助けしながら行うのがおすすめ。
開けるときの達成感が「やってみよう」という意欲にもつながります。

「できた!」「開いたね~」という体験が次のチャレンジを引き出すんです
おままごとや移し替え遊びで協調運動を育てる
スプーンやトングを使って、おじゃみや、毛糸のボールを容器に移す遊びは、手と目の協調を促します。
集中して「狙う」経験を重ねることで、実際の食事でも「口へ運ぶ」動きがスムーズに。

遊びで練習しておくと、ごはんの時間がもっと楽になります。
床にいくつ落ちても気にせずに、夢中になって挑戦する子どもたち。
その「できたー!」の顔は、何度でも見たくなる、ほんとうに素敵な笑顔ですね。
手押し車やでこぼこ道で体幹を鍛えよう

手押し車や荷物運び遊びでは、腕を使うだけでなく、背中やお腹の筋肉も自然と働きます。
バスタオルを丸めたて、でこぼこ道や、布団を使って坂道を作ったり、
段差を歩くことで、体のバランスを保つ力が養われ、
座ったときにスプーンを安定して持つ土台が作られます。

遊びながら体の土台が整うので、食事のときも手先が安定します
手押し車で歩いたり、軽い荷物を運ぶことで、子どもは楽しみながら体幹を鍛えることができ、
結果的に座ってスプーンを持つときの姿勢や動きが安定します。
食事は「練習」ではなく「楽しい本番」にしよう【まとめ】
発達を支える遊びの大切さを理解できたら、次は「上手くなる練習中」という気持ちを持って食卓を見守りましょう。
子どものペースで「できた!」を積み重ねよう
机の上がぐちゃぐちゃで、「今日も地球がお皿みたい…」
「片付けがとんでもない・・」思ったこと、ありますよね?(笑)
一人でやりたいけれど、まだ上手にできなくて、悔しい気持ちを抱えているのは、実は子ども自身かもしれません。
そんなとき「できたねー!」「おいしいねー!」と声をかけるだけで、子どもの表情はふっとほぐれます。
うまくいかない瞬間も、見守られている安心感があれば、また挑戦しようという意欲が自然と芽生えます。
『食べることを通して、「できた」が増える時間を、子でもと一緒に育てていきたいですね』
大人が笑顔で「おいしいね」と伝えるだけで、子どもにとっては十分な応援になるのです。
大人が「おいしいね」と笑顔を向けるだけで十分
子どもは、大人の表情をよく見ています。
「上手にできた?」よりも、「おいしいね」「たのしいね」と笑顔を向けることが、何よりの応援になります。
『ごはんは「訓練」ではなく、「たのしくて」「おいしい」時間であることを忘れないでおきたいですね』
「ごはんはたのしい」で終わる毎日を
スプーンが上手に使えるようになる日は、必ず来ます。
焦らず、見守りながら「おいしいね」と笑い合う時間を積み重ねていきましょう。
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