
「かじることができない」「一口が大きすぎて、喉につかえそうで怖い」
そんな悩みはありませんか?
実は、“かじりとる”という行動には、発達や食事の基礎になるとても大切な意味が詰まっています。
今回はなぜ「かじりとる」が大切なのか、どうやって「かじる」ことを教えてていけばいいのかを、管理栄養士の視点でわかりやすく解説します。
この記事は、1歳〜2歳ごろの子どもを中心にした内容です。
個人差はありますが、「かじりとる」力が気になり始めたときの参考にご覧ください。
この記事でわかること
- 「かじりとる力」が発達に与える影響
- 食事の姿勢や環境の整え方
- 「かじりとる」市販のおやつ紹介
どうして一口でかじれないの?

まだ「かじり取る力」が育っていないことも
大人が簡単にしている、「かじり取る」という動き。実は、「パクッ」と一口かじるには、実はこんなにたくさんの動きが連携しているんです。
- 手でお口まで「エイッ!」
→ 手づかみで持った食べ物を、ちょうどよい位置に運ぶコントロール力
(手の動き・タイミングを調整する力) - お口を「キュッとすぼめる」
→ 唇をすぼめて、前歯で噛みやすくする動き
(唇や口まわりの筋肉をうまく使う力) - 前歯で「パクッ!」
→ 上下の前歯を合わせて、食べ物をしっかりかじる力
(噛みちぎる感覚・噛むタイミングのコントロール) - 体を「グッと」支える
→ これらの動きを安定して行うには、体幹や首、あごの支えも大切なんです。
一口かじるって、実は「手・口・歯・体」のチームプレー。
どれかひとつが育ち途中なら、かじり取りがむずかしく感じるのも自然なことなんです。
どうしたら「かじり取る」力が育つの?

かじりとる力を育てるには、食べる前の「姿勢」や「環境」もとても大切。
日常の中で整えることができるポイントを紹介します。
足の裏は床にピッタリ!+ひじ・ひざ・背中は90度!

【正しい姿勢のポイントは3つ】
- 足の裏は床にピッタリ
- 背中はまっすぐ
- 身体とテーブルの間はこぶしひとつ分あける
- テーブルの高さが肘が90度くらい、自然に曲がる高さがベスト
特に大切にしたいのが「足が床またはフットレストにしっかりついていること」
足がブラブラしていると、上半身が安定せず、うまく前歯で食べ物をかじれません。
足裏が床につくことで、体が安定し、強く踏ん張ることができ、しっかりと噛む力を生み出します。
私も実際に、子どもの体格に合わせて、背もたれのある椅子では、背中にクッションやバスタオルを挟んだり、、足元にはジョイントマットを重ねて高さを調整しています。
私の失敗談なんですが、足の踏ん張りが強い子ってたまにいて、ジョイントマットにグイーンって、踏ん張るんです。そしたら、椅子ごと斜めにいくことに!あわや転倒。冷や汗ものでした。
どうか、安全面にはくれぐてもご注意してくだいね。

足が安定すると姿勢維持がしやすくなり、上半身や顔まわりの筋肉も使いやすくなります。
食べ物の置き場所は体の真正面

プレートの配置や食材の向きも、かじりとりやすさに影響します。
なるべく「手前中央」に配置し、子どもの体の中心に近づけると、かじる動作がスムーズに。
奥まった場所や左右に偏っていると、顔を傾けたり、無理な姿勢になりがちです。

大人がそっと、正面に直してあげるのも◎
正しい姿勢は「自分で食べたい!」も引き出す。

姿勢が整うと、かじるだけでなく、食事そのものへの集中力が高まります。
「かじり取る」には自分で食べたい!という思いが大切。
逆に、姿勢が悪いと手元が不安定になり、「食べさせてもらう」ことに頼りがちに。
自分で食べる意欲が薄れてしまいます。
最初のうちは、座り直す声かけもこまめにしてあげるのも◎
私は食べていると、だんだんと崩れてくるのが当たり前。
なので、出来てないことを注意するよりも、前向きになるような声かけを意識しています。

お背中「ピッ!」見せてほしいな~

足は床にピタよ~
ちょっと楽しげな雰囲気で伝えることで、子どもたちも素直に動いてくれたり、笑顔になったりするんです。
ただし、あまりに楽しさに振り切れてしまって、「おふざけモード」に入ってしまうこともあります。
そんなときは、少し声のトーンを落として「真剣なモード」に戻すようにしています。
8割出来ていればいい
正しい姿勢で食べることは、噛む力や飲み込みの力、集中力を育てる上でもとっても大切。
でも、子どもたちはまだまだ発達の途中。自分の体を支える力もまだまだ未熟。
食事の時間のずっと、時間にして10~20分間、ずっとピシッと座り続けるのは難しいものです。
だから私は、「8割くらいできていたらOK!」と考えています。
大人が優しく声をかけて、少しずつ姿勢を整える習慣を育てていければ、それで十分。
大事なのは、完璧じゃなくて「戻れること」。
姿勢が崩れたときに、また整えようとするきっかけをつくることで、子どもたちは自然と身についていきます。
おやつの時間でできる「かじりとる」練習

やわらかいものから始めてみよう
かじりとる練習を始めるときは、まずは「やわらかめでかじりやすい食材」からスタートするのがおすすめです。
たとえば、
- 蒸したにんじんスティック
- バナナなどのやわらかい果物
などは、前歯でも簡単に噛みきれるので、安心して取り組めます。
やわらかさの目安は、
「親指と人差し指で軽くつまんで、つぶれるくらい」
まずは、「できるんだ!」という達成感を味わうことが大切です。
偶然つまんで、口に入った!
その、瞬間を見逃さず、

すごい!!できたね!!
と、よろこんで伝えます。
すると、子どもは「これはどうやら、良いらしい」と
学んでくれます。
達成感を感じることで子どもは自信がつき、次のステップにも前向きに取り組めるようになります。
慣れてきたら、少しずつ硬さのあるものにもチャレンジ。
食事の時間は「ちゃんと食べてほしい!」という気持ちもあり、つい余裕がなくなりがちですよね。
でも、ちょっと気持ちにゆとりの持てるおやつの時間なら、「かじりとる」練習も、おいしく・楽しく取り入れやすくなります。
待って・見せて・そっと手渡すの3ステップ

かためのおやつを前歯でかじることは、実は遊び感覚でできるトレーニング。
中でもおすすめは、市販の赤ちゃん用せんべいやスティック状のおやつ。
「前歯でかじる」動作にぴったりです。
そして、かじりとる練習を始めるにあたって、意識するポイントは3つだけ。

【ポイントは3ステップ】
- 待って:これからすることを見せてあげます。
- 見せて:子どもが自分のペースで考えたり、動いたりする時間をあげます。
- 手渡す:子どもが準備できたらそっと物を手渡す。
この3ステップは、「子どもが安心して自分のペースで行動できるようにするコミュニケーションの方法」と言われていて、この3つを意識することで、子どもは「自分のペースで大丈夫」と感じ、安心して取り組むことが過ごせるようになります。
エジソンママから出ている、「かむっこスティック」は、スティック状をしていて、手づかみ食べの練習にもなるスティック形状と硬めの食感が、噛む力の練習にピッタリです。

原材料は香料・着色料・保存料を使っていないので、安心して、おすすめできます。
実はハッピーターンも⁉︎
そして…ちょっと意外ですが、
あの人気おやつ“ハッピーターン”も「かじる練習」にぴったりなんです。
細長くて、ほどよくかたい。そして何より、おいしい!
さらに注目したいのが、食べ終わったあとの“魔法の粉”──
口のまわりについたのを舌でぺろっと取ろうとする動きも、実は立派な口の運動なんです。

シメシメ、たくさんお口つかってるね〜(笑)
楽しくて、おいしくて、自然と“お口の力”が育つ。
そんなおやつタイムって、ちょっと特別で、すてきですよね。
あえて「大きめ」の食べ物を出してみるのもコツ

かじりとる練習には、一口で食べられないくらいの大きさのものをあえて出すのも効果的です。
たとえば、小さなおにぎりではなく、少し大きめににぎったおにぎりをそのまま渡すと、
「前歯でかじり取るしかない」状況が生まれます。
三角形の形は子どもの手でつかみやすく、持ちやすい尖った角の部分が「かじりとる」動作を自然にうまれます。
これは、子ども自身が自然と“かじって食べる”感覚を身につける良いきっかけになります。
もちろん、口に入れる量が大きくなりすぎないように、大人が見守りながら安全に進めていくことが大切です。

「まるごと持ってガブッ!」が、子どもにとっては最高の練習になることもあります♪
声かけの工夫も楽しく
私はよく、子どもがかじり取る瞬間に
「ガジッ!」と効果音をつけたり、
噛むときに「アギアギアギ〜」と声をかけたりしています。
また、耳をすます仕草をして
「いい音聞こえるよ〜、噛んでるね〜!」と伝えると、
子どもも嬉しそうに噛むことを楽しんでくれます。
こんなふうに「声かけ+遊び要素」を入れて、
「かじる」ことへの抵抗も少なるなるといいな~と日々工夫しています。
かじりとる力が子どもの発達に与える影響

- 口腔機能の発達
- 脳への刺激
- 噛む力
- 自分で食べる力
- 自分で食べる基礎
かじり取る動きは、1歳ごろから少しずつ始まり、
2歳、3歳と年齢を重ねながら、だんだん上手になっていく力です。

かじり取る力は、すぐに完成しなくても大丈夫!
口の運動機能が育ち、滑舌・嚥下の力に

前歯でパクっと「かじる力」は、ただ、おなかを満たすためじゃなくて、お口を上手に動かす練習になったり、体のバランスを育てたり、脳へのいい刺激にもなります。
かじり取るときには、唇・舌・あごが連携して動きます。
この動きは、「舌をコントロールする力」や「飲み込む力(嚥下)」にもつながっていきます。
口の動きがスムーズになることで、発音(滑舌)の土台づくりにもなります。

食べることとお話しする力って、実はつながってるんですね。
脳への刺激と認知発達にも影響

前歯でかじって、口に入れて、もぐもぐ咀嚼する。
これら一連の動作は、脳にたくさんの刺激を送ります。
とくに「かじりとる」動きは、自分で「よし、かじろう!」と考えて体を動かす、
ちょっとむずかしい動作なんです。
だからこそ、「頭の前のほう(前頭葉)や体を動かす場所(運動の部分)」がしっかり働くのです。

考える力や集中する力を育てるのに役立つんです。
「自分で食べる力」の第一歩
自分の手で持ち、口に運び、噛みちぎる。
これができるようになると、「食べることは自分でできる!」という自信につながります。
この「できた!」の積み重ねが、やがて箸・フォーク・スプーンへと発展していきます。

かじることは、ただの口の運動じゃなくて、「自立のスタート」でもあるんです。
まとめ「かじりとる力」で食べる土台が育つ

かじりとる力を育てることは、単なる「食べる技術」ではなく、子どもが自分の力で「食べる楽しさ」を見つけるための出発点です。
かじりとる練習が子どもの自信になる
練習を積み重ねることで、食べることが「できる」→「楽しい」に変わります。
かじりとる経験は「自分で食べられた!」という自信につながり、苦手な食材への挑戦にも一歩踏み出しやすくなります。
おうちでもできるサポートを続けよう
特別な道具がなくても、日常の中にちょっとした工夫を取り入れるだけで、「かじりとる力」は育ちます。できることから、少しずつでも大丈夫。
最後に伝えたいこと
「かじりとる」ことは、食べることのはじまりの一歩。
前歯で食べ物のかたさや大きさを感じながら、自分でひとくちの量を決めて、口に入れる。
そのひとつひとつの経験が、少しずつ、子どもたちの「食べる力」の土台を育ててくれます。
焦らず、子ども自身が「できた!」と感じられる小さな成功体験を大切にしたいですね。
参考書籍:
- 堤ちはる「食をとおして育つもの・育てたいもの」(きょうせい)
- 橋本美恵/鹿野佐代子「発達の気になる子の「できた!」が増えるトレーニング 誤学習・未学習を防ぐ!」(翔泳社)
- 林万リ「やさしく学ぶからだの発達part2運動発達と食べる・遊ぶ」(全障研出版部)
- 『保育所における食育に関する指針』厚生労働省(2019)
- 「授乳・離乳の支援ガイド」(2019)(厚生労働省)
- 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
※記事内容は筆者の現場経験と、上記資料を参考にまとめたものです。
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